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TPPをどう考えるか(2)

2011.10.26(10:30) 60

                 立ち止まって考える

 まずTPPについておさらいをしておきます。TPP は Trans-Pacific Partnership (正式の名称はもっと長ったらしいのですが一般には簡単なのでこの名称を採用しています) の略ですが、日本語は環太平洋経済連携協定です。シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4ヶ国の経済連携協定が原型ですが、後にアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加を決め、9ヶ国の間でヒト、モノ、サービス、カネの移動を自由にしようとする協定です。
 
 これは経済的な視点だけでなく、太平洋を囲む国々の親密な仲間形成を意味していると思います。見方を変えると、中国を外した隣組を形成して自己中心的でしかも最近特に軍事的脅威を増してきた中国に対抗しようという意図が見えます。私は後者の理解を評価しています。ヒト、モノ、サービス、カネの移動の自由化も重要ですが、このような仲間に日本が入るのか入らないのかという選択を迫られていると思います。

 TPP に加盟しないと何が困るのかと考えると、日本は近隣諸国から孤立して、結局日本経済もますます低迷してしまうということではないでしょうか。ここから考えると、この問題のメタコンセプトは『近隣諸国と仲良くお付き合いして、日本社会の安定的発展を目指す』ということになります。このメタコンセプトを満たすために日本はどのような行動をとるべきかを考えてみたいと思います。

 ところで、最近マスメディアによるTPPの報道がますます騒がしくなってきました。報道から諸団体のTPP反対行動を見ているとなんとなく違和感を感じます。過去の歴史に同じような国を二分する混乱が何度もあったような気がします。幕末に起こった尊王攘夷論に基づく政治運動はよく引き合いに出されます。しかし、もっと近代に同じようなことがありました。私の学生時代に興った安保闘争(1959~1960年)です。単にアメリカ軍に基地を提供するための安保条約から、日米共同防衛を義務づけたより平等な条約に改正しようとしたところ、これを締結すると日本は米ソ戦争に巻き込まれるから絶対反対という闘争でした。後にソ連共産党中央委員会国際部が社会党や共産党、総評などに大きな援助を与えて運動を煽ったということが明らかになっています。私たち学生はその理論に振り回され、反対運動にうまく乗せられたのでした。しかし、私自身は心の隅になんとなく本当だろうかという小さいわだかまりがありました。それから50年結局日本には何も起きませんでした。あの騒ぎは何だったのでしょう。もっと冷静に人の意見に振り回されるのではなく一度立ち止まって冷静に自分の頭で考えてみるべきでした。周りの空気に流されて自分を見失ってしまうととんでもない失敗をしてしまいます。

  2011年10月25日付けの日経にTPPで問題となる分野の影響をまとめた記事が載っていますが、どのような分野で影響が出るかということを概観する意味では良い記事です。そこにも記述されていましたが、政府は「混合診療の解禁や営利企業の医療参入は議論の対象になっていない」と否定しています。医師会はもっと冷静に対処すべきでしょう。医師や弁護士の受け入れも日本語ができない外国人がこのような仕事を日本ですることは不可能です。つまり日本語は公に認められた立派な非関税障害で日本のいろいろな分野を保護してくれています。

 一番問題は輸入農作物の問題でしょう。安い農作物がなだれ込んできたら日本の農業は壊滅的な打撃を受けると農業関係者は声高に叫んでいます。この背後にはもちろん安保のような外部の陰謀はないでしょうが、しかし、これも冷静に考えてみましょう。本当に農業は壊滅的な打撃を受けるのでしょか。明日から直ぐ関税がゼロになるわけではありません。締結後10年間の余裕があります。現在の国の過保護な制度に護られて成り立っているような農業のままでいいのでしょうか。国民に高い農産物を押し付けて、税金の補助を受けているままでいいのでしょうか。もっと工業製品のように生産性を向上させることを考えなくていいのでしょうか。そんなことは誰も考えていないでしょう。これをチャンスにもっと儲かる、リーズナブルなコストで日本らしい高品質な農作物を作り、しかも輸出もできる農業に変革する方策を考えるべきではないでしょうか。

 今回のTPPの農業に似たような問題が過去にもありました。自動車の自由化です。1965年に日本は自動車を自由化しましたが、当時も自動車を自由化したらたちまちアメリカの自動車産業に食いつぶされて、日本の自動車産業は消えてなくなってしまうと大反対がありました。ところが現在の自動車産業はどうですか、消えるどころか世界を席巻しているではないですか。私は日本人の能力・知力を信じています。もちろん農業は日本特有の地形の違いもあるので一概には言えないことは分かっています。しかし日本人が知恵を出し、努力すれば必ず世界に太刀打ちできる農業が実現できるはずです。農業関係者も国民も幸せになれる農業を創造するべきです。これを機会に国の支援を得ながらそのような努力してはいかがでしょうか。その上で『近隣諸国と仲良くお付き合いして、日本社会の安定的発展を目指したい』ものです。

 安保闘争や自動車自由化の反対運動のような過ちを二度と繰り返さないように、特定のグループのアジテーションに振り回されるのではなく、一度立ち止まって冷静に自分の頭で考えてみるべきではないでしょうか。

雲場池
2011.10.25撮影
軽井沢の雲場池です
紅葉のきれいな池でした
日本には外国に誇れる素敵な景色が沢山ありますね


Recsat Hiromu



2011年10月
  1. TPPをどう考えるか(2)(10/26)
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