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日本のエネルギー問題を考える(11)最終回

2011.09.13(09:37) 57

  
日本のエネルギー戦略の提案とまとめ(その4)


 前回と同じ表を下記に示しますが、今回は集中型発電システムの残り(表1の黄色の範囲)と今まで検討して来た戦略のまとめ(表2)を述べたいと思います。

 まず海流発電があります。黒潮のような安定した海流を利用して発電します。海流発電についてはシリーズ(6)を参照してください。一般財団法人エンジニアリング振興協会は、定格出力2MW(0.076億kWh/年)の海流発電システムの事業化をめざして基本設計を開始したと報告されていますが、他にはとくに我が国では具体的プロジェクトが検討されていないようで寂しいかぎです。一方海外ではアトランティスという会社が50MW(4.38億kWh/年)の海流発電システムをインドに建設するというニュースはありますが詳細は不明です。海流発電は太陽電池や風力発電のように天候に影響されないということでは優れていますが、海中という条件が別の技術的難しさをもたらしているようです。そこで一応10年後に2億kWh/年、15年後に20億kWh/年と控え目に見積もりました。
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/climate/attachement/091023-7wave.pdf#search=%27%E6%B5%B7%E6%B5%81%E7%99%BA%E9%9B%BB%27
 
 次は夢のある話ですが、高変換効率の太陽電池です。シリーズ(5)で詳しく述べましたが、現在の太陽電池が太陽光スペクトルの一部しか利用していないので変換効率が低いのですが、これを太陽光の幅広いスペクトルを利用できるようにすると変換効率は50%以上になります。現在の平均が20%ぐらいですから2倍以上の性能になります。素晴らしいですね。環境省の報告では太陽発電のポテンシャルが一番条件の悪いシナリオの場合でも540億kWh/年と予測していますから、私は15年後に控え目に90億kWh/年と仮定しました。

集中型発電システム(2/2)

 
 次は地熱発電です。シリーズ(5)で述べましたが、多量の蒸気を噴出する地層を見つけることが技術的に非常に難しいと思われます。その技術が確立されれば地熱発電は有望ですが、そのような証拠はまだありません。そこで私のアイディアですが(他所で既に提案されているかもしれませんが調べていません)、高温の地層まで穿孔し、そこに高圧の水を押し込むと水蒸気が簡単に得られるのではないでしょうか。そのような地熱の利用技術はそれほど難しくないと思われますので15年後に確立するとして、90億kWh/年を仮定しました。

 高変換効率の太陽電池と中東のような灼熱の広大な砂漠地帯の利用を融合して発電するシステムを考えました。発電した電力の一部は中東諸国の電力として利用してもらい土地利用料に当てます。残りを日本に輸入します。電力として日本に輸送することは困難ですから水素の形で輸入します。シリーズ(4)で述べた固体高分子電界質水電解法で水から水素を生成し、それを日本に輸送して、水素燃焼ガスタービン+コンバインドサイクルで発電すれば大量の電力が得られます。しかしここでは15年後に90億kWh/年だけを仮定しました。

 さらに高効率で我が国のエネルギー自給率を高める素晴らしい手段が、日本近海に多量に埋蔵されているメタンハイドレードから水素を生成し、それを新世代燃料電池に直接入れて発電するシステムです。メタンハイドレードの代わりにもちろん石炭ガス化ガスも利用することができます。燃料電池が進歩すれば(シリーズ(6)に記載)メガ発電が可能になりますから、15年後にこの発電量をやはり90億kWh/年としました。以上集中型発電システムによる発電量の合計が表の最下行に示してあります。
 
まとめ

 ここまで述べてきた戦略をまとめ、将来どうすればよいかという提案を表2に示し、結論を詳しく述べます。

まとめ



1.新エネルギー発電と既存の発電システムにより10年後を超えて15年後以内に原子力発電は全廃できる

 表2は、省エネ分を引いた「将来年間電力需要(黄色の最初の行)」から「分散型発電システム+集中型発電システムによる発電量」(ここには既存の火力・水力発電量も含まれます)(黄色の2番目の行)をひいた差を最下行(水色の行)に示します。
 10年後までは新エネルギー技術と既存の火力・水力発電を合わせても電力は不足しますので原子力発電を使います(原子量発電はピンク色の行で示してあります)。それでも新エネルギーで発生した電力分は原子力発電を減らせます。15年後ではありますが原子力発電は全廃できることが分かってホッとしました。願わくはこの期間に二度と福島のような事故が起きないことを願っています。またこうしている間にも使用済み核燃料、危険な核廃棄物が作られ続けていることを忘れてはいけません。
 繰り返しますが、この15年後という数値は、技術論です。政治的な社会条件は考慮しておりません。以上の説明でもお分かりのように、新技術の発電能力はかなり控え目に見積もってきましたから、政治が本気になればもっと短期間に全廃することは可能です。どのようなプロシージャでこれをより早く実現していくかは政治の役目です。
 一方原子力発電の関係者や関連企業はこの戦略が実現すると仕事を失うことになります。その方たちや企業は新エネルギー産業に転換してもらいます。こちらの方が安全で、将来に夢が持てる明るい産業分野になるでしょう。

2.新エネルギーと既存の発電システムにより15年後にはエネルギーの自給率を約10%向上させられる

 15年後のエネルギー収支は原子力発電を全廃した上に、さらに740億kWh/年の電力が余ります。これで石油火力発電も全廃できました。それでも余った分を天然ガス火力発電の削減に充てました。この結果、740億kWh/年で石油と天然ガスの輸入を減らせますから、740÷7125×100=10.4%自給率を向上させたことになります。原子力のウランの輸入分を考慮すればもっとエネルギー自給率は高まるでしょう。

3.さらに進化した新エネルギーおよび既存発電システムの進歩とメタンハイドレードとを組み合わせると15年後以降にさらにエネルギー自給率を高められる

 メタンハイドレードが自由に利用できるようになり、新エネルギーが有効に利用できるようになれば、原子力発電も石油・天然ガス火力発電もなくなり、エネルギー原料として輸入するものは石炭だけになるので、エネルギー自給率は75%に飛躍します。日本国内での生産活動も安定します。社会生活も安定します。
  このように新エネルギー関連の産業が興り、エネルギー自給率が高まれば、ほとんど国内だけで生産と消費が循環する経済(私のシリーズ「内需循環型経済」を参照してください)に移っていくことが可能になります。つまり為替レートに左右されない、安定した豊かな経済が実現できます。もちろん新エネルギー関係の製品・システムを輸出することも可能でし、海外での生産や企業買収はそのまま継続されると、その収益が日本に還流し、その資金で必要な物資を海外から輸入することもできます。

 戦略のまとめはこれで終わりますが、最後に二、三付記したいと思います。

 以前から何回も述べたとおり、技術はあるとき革命的な変化をもたらします。そのようなときは当然ここに述べてきた戦略は修正されなければなりません。またここではあくまでも一つの技術戦略を述べたまで、他のソリューションは無数に考えられます。このシリーズの目的は原子力発電を時系列的に削減・廃止できる戦略が一つは存在しうることを示すことです。
 
 今後はこの戦略をどのように実現していくかという政治・経済的なプロシージャを検討する段階に移っていきます。この問題は他の専門家に譲ります。是非素晴らしいアイデアを沢山出してほしいと思います。

 もうひとつ重要な問題は、このシリーズでは簡単にしか述べませんでしたが、「新しい豊かさとは何か」という問題です。私は大量生産・大量消費の文化から、精神的なものが尊ばれる文化の時代が来ると思います。日本人はものづくりだけでなく、もっと精神的な創造性・独創性で世界の文化に貢献し(もちろんこの分野で世界的に活躍されている方は現在でも多数おられます)、尊敬される国に変わっていくのではないかと思います。この点に関しても是非皆さんの活発な議論を期待しましてこのシリーズを終わります。長い間お付き合いくださりありがとうございました。

現在の大沼

前回紹介した赤城山の山頂にある大沼の現在の姿です
実はこの湖で沢山獲れるワカサギが
放射能汚染で獲ることを禁止されているのです
福島第一原子力発電所から225kmも離れているのにです
原発事故の影響の広さに驚かされます


結氷始めた大沼

私の知人の岩崎弥平次さんの撮影です
結氷始めた神秘的な大沼の写真です


冬の大沼のワカサギ釣り

同じく岩崎さんの撮影で結氷した
大沼でワカサギ釣りを楽しむ人です
このような風景はいつ見られるようになるのでしょう




Recsat Hiromu



2011年09月
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